平成19年4月5日
会員各位
社団法人 日本病院薬剤師会
日本病院薬剤師会リスクマネジメント特別委員会
委員長 土屋 文人


医薬品の安全使用のための業務に関する手順書作成に関する留意点



 平成19年3月30日付けで、4月1日からの改正医療法施行への医政局長通知(良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の一部の施行について:医政発0330010号)が出されました。

 今回の通知では医薬品に関しては、医薬品安全管理責任者の配置及び、「医薬品の安全使用のための業務に関する手順書(以下本手順書という)」の作成を求めています。また、医薬品安全管理責任者は当該医療機関において従業者の業務が医薬品業務手順書に基づき行われているか定期的に確認し、確認内容を記録することが求められています。本手順書とおりに実施されていない場合には、事実上、病院長は業務改善を図ることが求められることになります。

 本手順書は薬剤部の手順書ではなく、あくまで医療機関としての手順書であることに十分留意する必要があります。業務手順書を作成するための参考資料として厚生労働科研北澤班の報告書がありますが、この報告書は網羅性が高く、あらゆるケースを考えて掲載しておりますので、これがそのまま当てはまる医療機関はないものと思われます。むしろ何年か経過した際にこの報告書の項目に近づいていくことが望まれているものと考えてよいと思います。

 医薬品安全管理責任者の業務が手順書とおりに業務が行われているかをチェックするという内容であることから、日本病院薬剤師会では平成15年に本会薬剤業務委員会が作成した「病院薬剤師のための業務チェックリスト」を活用することを推薦します。本チェックリストに掲載されている項目について、各医療機関の実情に併せてその内容を加筆・訂正した上で、本手順書において今回の局長通知で少なくとも記載が求められている以下の事項の各項に挿入していくという手法がよいのではないかと考えています。


<局長通知で本手順書に求められている事項>

  1. 病院等で用いる医薬品の採用・購入に関する事項
  2. 医薬品の管理に関する事項(例=医薬品の保管場所、薬事法(昭和35年法律第145号)などの法令で適切な管理が求められている医薬品(麻薬・向精神薬、覚せい剤原料、毒薬・劇薬、特定生物由来製品等)の管理方法)
  3. 患者に対する医薬品の投薬指示から調剤に関する事項(例=患者情報(薬剤の服用歴、入院時に持参してきた薬剤等)の収集、処方せんの記載方法、調剤方法、処方せんや調剤薬の鑑査方法)
  4. 患者に対する与薬や服薬指導に関する事項
  5. 医薬品の安全使用に係る情報の取扱い(収集、提供等)に関する事項
  6. 他施設(病院等、薬局等)との連携に関する事項 これらと業務チェックリストの項目の対応例は別紙資料をご参照下さい。

 本手順書は冒頭で述べましたように、薬剤部の手順書ではなく、医療機関独自の手順書であることから、必ず各医療機関において手作りで行う必要があります。その意味では内容が同じ手順書は存在しないということになります。また、この種の手順書において最も重要なことは、理想を記載するのではなく、現状に照らし合わせて作成するということです。現状と理想の間にはさまざまな乖離があると思いますが、理想に向けていかに努力をし、常に改善を図るのかが求められるのです。1年間に何回手順書が改訂されたかが重要です。本手順書の作成には3ヶ月間の猶予がありますが、その期限は完成品(理想系)を求めているものではありません。医療機関の規模・機能にあった「独自の手順書」を作成し、今後随時改訂していくことが重要です。
日本病院薬剤師会では本手順書作成についてはホームページ等で適宜情報提供を行いますのでご参照下さい。また、リスクマネジメント委員会としては医薬品安全管理責任者を対象とした講習会等も開催を予定致しますのでその際にはふるってご参加下さい。

 尚、会員が利用しやすいように、薬剤業務チェックリストのワード版と項目に番号を付したエクセル版をホームページに掲載いたしますので適宜ご利用下さい。


局長通知で手順書に求められている項目と
病院薬剤師のための業務チェックリストの項目の対応の一例

  1. 医療機関で用いる医薬品の採用・購入に関する事項 → 2【医薬品の採用】
  2. 医薬品の管理に関する事項(例=医薬品の保管場所、薬事法などの法令で適切な特定生物由来製品等)の管理方法) → 3【医薬品管理】
  3. 患者に対する医薬品の投薬指示から調剤までに関する事項(例=患者情報(薬剤の服用歴、入院時に持参してきた薬剤等)の収集、処方せんの記載方法、調剤方法処方せんや調剤薬の鑑査方法)→ 3.4 持参薬管理,4【調剤】
  4. 患者に対する与薬や服薬指導に関する事項→ 6【薬剤管理指導業務】
  5. 医薬品の安全使用に係る情報の取扱い(収集、提供等)に関する事項 →7【医薬品情報】,8【市販後調査】,9【市販直後調査】、10【医療機関からの副作用等の報告】
  6. 他施設(医療機関、薬局等)との連携に関する事項 → 1.8【地域薬剤師会との連携】


良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の一部の施行について(医政発0330010号)

厚生労働科研北澤班の報告書

病院薬剤師のための業務チェックリスト(Word)

病院薬剤師のための業務チェックリスト(Excel)