令和元年12月4日に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の一部改正が公布され、医療上特に必要性が高い医薬品等を指定し、優先的に審査・承認される仕組みが整備されました。
今般、病院薬剤師の立場から、医療安全や医療の質の向上に貢献すべく、法改正に従った今後の対応についてまとめましたので、体制整備を進めるための一助として参考とされますようお願い申し上げます。
- 「先駆け審査指定制度」の法制化、小児の用法用量設定といった特定用途医薬品等に対する優先審査等への対応について
本制度に関して、先駆的医薬品等は世界に先駆け日本で初めて実用化される医薬品等として、特定用途医薬品等は医療上のニーズが著しく充足されていない医薬品等に対して、優先的に短期間で審査対象となることを法律上明確化するものであるため、医療機関における製造販売後の安全対策の充実がより一層求められる。その際、特に医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)の利活用が重要となる。
薬剤師は、医薬品適正使用の観点から、以下に示すような薬学的患者ケアや適正使用策の立案・実践に寄与する必要がある。
・製造販売開始直後は医薬品の安全性に関する情報が特に限られている可能性があるため、その時点で得られている「重要な特定されたリスク」、「重要な潜在的リスク」及び「重要な不足情報」について的確に把握し、病院薬剤師業務に利活用する。また、臨床研究支援部門と連携して開発段階における治験の情報を収集し、医薬品等の適正使用及び患者への服薬指導並びに治療中のフォローアップに努める。
・適正使用推進のために追加のリスク最小化活動として作成された患者向け資材を服薬指導に利活用する。
・医薬品安全性監視活動の一環として、副作用症例の情報収集、市販直後調査への協力、製造販売後調査への支援を行う。
一方、医療機関においては、以下に示すとおり、当該医薬品等の臨床研究を適正かつ円滑に実施できる環境を整備しておく必要がある。
・臨床研究中核病院又は特定領域の臨床研究を推進する拠点病院と、その支援を受ける医療機関の役割の分担を整理し、臨床研究支援に係る手順等を明確化するとともに、双方の臨床研究に従事する者の交流を促進することで、相互のニーズを理解し、医療機関の連携の円滑化に取り組む。
・患者や市民を対象とした臨床研究に関する講習会等を積極的に実施し、臨床研究に対する普及・啓発に努める。
- 「条件付き早期承認制度」の法制化への対応について
条件付き早期承認制度により承認を受けた医薬品等の使用に際しては、製造販売後に有効性・安全性を適切に確認するために情報収集活動と評価がなされる医薬品であることから、以下に示すとおり、薬剤師が積極的に関与する必要がある。
・服薬指導を通し、製造販売後に有効性及び安全性について再確認を行う医薬品であることを、患者に対して適切に情報提供を行う。
・使用施設や医師等に関する要件設定等を定めた承認の条件について熟知し、承認後における適正使用に務める。
・条件付き早期承認制度の対象となった医薬品等については、製造販売後調査を通した実臨床における有効性・安全性情報の収集が特に重要となる。したがって、GPSP(Good Post-marketing Study Practice;医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準)に従い、契約や実施要綱の確認、使用状況調査あるいは副作用報告の共有等について、医師、薬剤師、臨床研究支援部門を含めた関係部門、さらには院外薬局との連携を図る。
- その他
上記1及び2の改正法については、令和2年9月1日に施行される。
- 参考情報
・医薬品医療機器制度部会「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」
(平成30年12月25日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03030.html
・厚生科学審議会「臨床研究・治験の推進に関する今後の方向性について2019年版とりまとめ」
(令和元年12月6日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08132.html
・日本病院薬剤師会「病院薬剤師業務への医薬品リスク管理計画の利活用について」(平成26年12月15日)