ケース 01 副作用の重篤化回避(様式1)の事例
潰瘍性大腸炎に対しサラゾスルファピリジン錠を長期に服用していた患者さんに汎血球減少症※1を認め、葉酸欠乏性巨赤芽球性貧血の可能性が高いと薬剤師が評価し、医師と協議しました。複数の薬剤を服用していましたが、原因薬剤としてサラゾスルファピリジン錠が疑われたため、薬剤師の提案により、メサラジン錠へ変更するとともに、汎血球減少症の治療として葉酸錠とメコバラミン錠の補充療法が開始になりました。その後、汎血球減少症は改善し、潰瘍性大腸炎の再燃や新たな副作用症状もなく、潰瘍性大腸炎の治療を継続することができました。
→ 副作用は軽微な段階で回避でき、重篤化の回避に寄与しているため、「様式1(副作用の重篤化回避)」に該当する事例です。
※1 血液中に存在する主要な3種類の血液細胞(赤血球・白血球・血小板)が全て減少している状態
ケース 02 副作用の未然回避(様式2)の事例
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の自家末梢血幹細胞移植の前治療(BuTT療法:ブスルファン注+チオテパ注)が開始になりました。患者さんが服用中の脂質異常症治療薬と糖尿病治療薬はBuTT療法との相互作用から副作用を招く可能性があったため、薬剤師が医師と対応を協議し、脂質異常症治療薬と糖尿病治療薬の服用を中止することになりました。あわせて、BuTT療法による肝障害、痙攣、皮膚障害など副作用の予防として内服薬や保湿クリームの処方を薬剤師が医師に提案し、提案通り実施することになりました。治療中に肝障害、痙攣や皮膚障害を発現することなく退院し、治療を継続することができました。
→ 副作用は未然に防がれたので、「様式2(副作用の未然回避)」に該当する事例です。
ケース 03 薬物治療効果の向上(様式3)の事例
がん薬物療法を開始するため入院した患者さんに対し、薬剤師が初回面談時にがん性疼痛が十分にコントロールできていないことを確認しました。薬剤師がレスキュー薬(とんぷくの鎮痛薬)の使用状況と鎮痛薬の定期服用時間前に痛みが増強するとの患者さんの訴えから、定期内服薬であるオキシコドン徐放錠(持続型の鎮痛薬)の投与間隔を12時間毎から8時間毎に変更するよう医師に提案しました。翌日より変更され、NRS※1は10段階中1から2程度に改善し、レスキュー薬の使用回数も減少しました。副作用の増悪なく治療は予定通り実施され、患者さんは退院となりました。
→ 薬物治療効果(疼痛緩和)に寄与しているため、「様式3(薬物治療効果の向上)」に該当する事例です。
※1 患者さん自身が痛みを数値で評価する指標(Numerical Rating Scale:NRS)
ケース 04 薬物間相互作用に関わるプレアボイド事例
10年以上抗てんかん薬(フェニトイン錠およびフェノバルビタール散)を服用し、てんかんの発作コントロールが良好であった患者さんが、直腸がんの治療を開始しました。抗がん薬(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合錠)の服用開始後にめまい・下肢脱力・目の眩しさ・構音障害・嘔吐・眼振を認めたため、薬剤師は症状からテガフールによりフェニトインの血中濃度が上昇したことによるフェニトイン中毒を疑い、フェニトインの中止および抗てんかん薬の血中濃度測定を医師に提案しました。その結果、フェニトインの血中濃度が著明に上昇していたことが確認され、フェニトインの中止によって症状は速やかに改善しました。
ケース 05 周術期におけるプレアボイド事例
薬剤師による手術前面談で、患者さんより過去の手術で毎回嘔吐していたと申告がありました。薬剤師は術後悪心・嘔吐発症リスクを評価し、中リスクと判断し、制吐薬(オンダンセトロン注)の追加や悪心・嘔吐の副作用が報告されている吸入麻酔薬を使用しないことについて麻酔科医と協議しました。その結果、術中に制吐薬が使用され、麻酔維持は吸入麻酔薬ではなく静脈麻酔薬を使用して実施されました。術後、嘔吐は発現しませんでした。
ケース 06 手術室担当薬剤師によるプレアボイド事例
直腸がん手術中にスガマデクス注を静脈内注射し、人工呼吸器を離脱した直後、血圧および酸素化の低下を認めました。ノルアドレナリン注の持続投与およびリザーバー酸素10 Lの投与が開始されましたが、血圧は十分に回復しませんでした。手術室担当薬剤師はスガマデクス注によるアナフィラキシーの可能性を指摘し、アドレナリン注の静脈内注射を提案し、実施されました。その後、循環動態は改善し、造影CT検査で肺塞栓症は否定され、臨床的にスガマデクス注によるアナフィラキシーが疑われました。
ケース 07 集中治療領域におけるプレアボイド事例
頭部外傷後にミダゾラム注で鎮静、気管挿管管理中の患者さんに対して、抜管予定の朝にミダゾラム注が中止になりましたが、夕方まで覚醒せず、主治医より拮抗薬であるフルマゼニル注の投与の指示がありました。薬剤師は、フルマゼニルの作用時間が短く、再鎮静や有害事象のリスクがあることから、フルマゼニル注を使用せずにミダゾラムの消失を待つ方針を医師に提案しました。抜管は翌日に延期され、プロポフォール注で鎮静を継続した後、翌日に意識レベルの回復を確認して無事に抜管できました。
ケース 08 薬剤師外来におけるプレアボイド事例
胃がん術後補助化学療法中の患者さんに対し、薬剤師が3コース目来院時に患者さんと面談し、食欲不振・味覚障害・体重減少・ふらつきがあることなどを確認しました。血圧低下も認めたため、抗がん薬による治療の延期と食欲不振に対して消化管運動機能改善薬(モサプリド錠)の追加を薬剤師は医師に提案し、実施されました。2週間後に体重は回復し、その後、軽度の副作用は認めましたが、抗がん薬による治療を継続することができました。
ケース 09 フィジカルアセスメントを端緒とするプレアボイド事例
アベマシクリブ錠およびレトロゾール錠を内服して乳がんの治療を行っている患者さんに対し、薬剤師が下肢浮腫と浮腫部位の疼痛を確認しました。左右差のある下肢浮腫であること、深部静脈血栓症に注意が必要な患者さんであることを踏まえ、薬剤師は医師に下肢エコー検査を提案しました。その結果、右ヒラメ静脈に血栓を認めました。薬剤師は医師に抗凝固療法開始を提案し、エドキサバン錠の内服が開始となりました。薬剤師は弾性ストッキングの使用についても患者さんに指導し、6ヶ月後に血栓は消失しました。
ケース 10 重篤副作用疾患別対応マニュアルを活用したプレアボイド事例
アロプリノール錠を開始した患者さんが、服用58日目に皮膚掻痒感や発熱を認め受診しました。外来診察前に薬剤師が患者さんの訴えを聴き取り、「重篤副作用疾患別対応マニュアル:薬剤性過敏症症候群」を参考にして、アロプリノール錠による薬剤性過敏症症候群の可能性を考えました。薬剤師は、アロプリノール錠の中止と血液検査を医師へ提案し、実施することになりました。検査結果より入院することになり、アロプリノール錠の中止とプレドニゾロン錠の開始で症状は軽快し、その後も再燃なく経過しました。